映画「どうすればよかったか?」を観て思うこと
「どうすればよかったか?」
この映画のタイトルを見たとき、ふと胸が詰まるような感覚を覚えました。
統合失調症を発症した姉と、その家族の20年間を記録したドキュメンタリー。
精神疾患を抱える方やそのご家族にとって、これは決して他人事ではないはずです。
そして私自身も、精神科訪問看護の現場に関わる者として、この映画が投げかける問いを、決して無視できないと感じました。
家族として、支援者として、どう向き合えばよかったのか
映画の中で描かれるのは、統合失調症という病気そのものではなく、それを抱えた**「一つの家族の物語」**でした。
病気を受け入れようとする家族、受け入れられない家族、どう接すればいいのか迷う家族…。
どの姿にも「正解」はなく、それぞれが懸命に悩みながら、何とかしようともがいている。
「どうすればよかったのか?」
これは、精神疾患を抱えるご本人だけでなく、ご家族や支援者も常に自問自答している問いではないでしょうか。
支援者として、私が感じたこと
私は精神科訪問看護の仕事をしていますが、支援者だからといって「正解」を持っているわけではありません。
• 病識のない方に、どのように病気のことを伝えるべきか
• 介入を拒否する家族に、どう理解を促すべきか
• 「本人のため」と思ってしたことが、かえって負担になっていないか
この映画を観ながら、これまで出会ってきた利用者様やご家族のことが、何度も頭に浮かびました。
支援の形は一つではなく、時に迷いながらも、その方にとっての「より良い形」を一緒に探していくことが大切なのだと改めて感じました。
「答えがない」ことを認める勇気
この映画が伝えたかったことの一つは、**「答えがないことを認めることの難しさ」**ではないでしょうか。
精神疾患に関わると、「もっと早く病気に気づいていれば…」「あの時、違う対応をしていれば…」と、後悔の気持ちが生まれることがあるかもしれません。
でも、過去を振り返っても、「こうすれば100%正しかった」という答えは見つかりません。
大切なのは、「どうすればよかったか?」ではなく、**「これからどうしていくか?」**ではないかと思います。
「失敗したとは思っていない」——この言葉の意味
映画の終盤、藤野監督(弟)が、年老いた父親に問いかけます。
「どうすればよかったのか?」
父親は、しばらく考えた後にこう答えました。
「失敗したとは思っていない」
この言葉を聞いたとき、私は驚きました。
私はてっきり、父親は後悔を口にするのではないかと思っていました。
「もっと早く治療につなげていれば…」
「もっと違う方法があったのではないか…」
そうした後悔の念が残るのではないかと。
しかし、父親は「失敗したとは思っていない」と言ったのです。
この言葉には、とても深い意味が込められていると感じました。
家族として、迷い、悩み、時には間違うこともあったかもしれない。
それでも、「あの時の自分たちなりに、精一杯やった」という思いがあったのではないでしょうか。
「どうすればよかったか?」と問い続けることは、時に自分を責めることにもつながります。
でも、過去を振り返って「あれが精一杯だった」と思えたなら、それは「失敗」ではなく、その時その時の「最善の選択」だったのかもしれません。
これからも、一緒に考えていく
精神疾患を抱える方、ご家族、支援者、それぞれの立場によって、感じることは違うかもしれません。
しかし、一つ言えるのは、「悩んでいるのは自分だけではない」ということです。
そして、答えがすぐに見つからなくても、一緒に考え、歩んでいくことができるということ。
この映画を通して改めて、精神科訪問看護の現場でできること、支援者としての在り方について、深く考えさせられました。
この問いを胸に、これからも皆さまと共に歩んでいきたいと思います。
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