ここあい便り⑩ ~薬は多ければ良いとは限らない~
精神科の薬と、安定を保つという選択
訪問看護の中で、「この薬、必要なんでしょうか?」という声を聞くことがよくあります。
特に、精神科の薬だけでなく、内科薬・鎮痛薬を含めた多剤処方が続いているケースでは、
体への負担や長期的な影響を心配する方も少なくありません。
確かに、薬は「少ないほうが良い」と感じてしまう気持ちはわかります。
しかし実際には、薬が“多い”=“悪い”ではなく、“合っているかどうか”が大切なのです。
精神科の薬は「減らすこと」がゴールではありません
特に、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)を抱えている方にとっては、薬は生活の安定を支える柱になります。
医師の中には、「あえて減らさない」という判断をされる方も少なくありません。
それは決して意地でも減らさないという話ではなく、“安定した状態を崩したくない”という
意志のあらわれでもあります。
なぜなら、こうした病気では
- 一錠の減薬で体調や思考に変化が起きる
- 過去に再発を繰り返してきた経緯がある
- 減薬をきっかけに不眠・幻覚・気分の波が戻ってしまう
といったリスクが高く、安定の継続がとても繊細なバランスの上に成り立っていることが多いからです。
薬の量より、“今の自分に合っているか”を大切に
「もう落ち着いているから、薬を減らしてもいいのでは?」
そう思う気持ちがある一方で、“安定している今”を大切に守るために、薬の量を維持する”という
考え方もあります。
また、たとえば睡眠薬についても、
「最近は眠れるけど、飲まないと不安になる」
「毎晩飲んでいるけど、たまにだけでもいいのでは?」
そんな場合には、“必要なときだけ使う(必要時使用)”という柔軟な使い方も選択肢になります。
こころのあいが大切にしていること
私たち訪問看護では、
- 服薬状況の把握と共有
- 本人の体調や不安の声の聞き取り
- 主治医との連携
を通して、「必要な薬が、必要な量で、無理なく継続できる」状態を支えることを目指しています。
私自身の考えとして、「薬をただ減らすこと」よりも、「適正な薬の量で、長く安定を保つこと」が
何より大切だと思っています。
精神疾患のある方にとって、安定した日々が続くことがどれだけ大切かを、現場で日々感じているからです。
薬のことを考えるとき、「飲みすぎでは?」と疑うだけでなく、
「この薬があることで、今の暮らしがどう支えられているか?」という視点も大切にしていきたいですね。
もし薬に関して不安や迷いがあるときは、どうぞお気軽にご相談ください。
一緒に、ゆっくり考えていきましょう。
訪問看護ステーション
こころのあい
所長・稲垣文雄
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