ここあい便り⑪ 〜被害妄想への関わり方と、訪問看護でできること〜

query_builder 2025/05/05
ここあい便り
ここあい便り⑪


「そんなことないよ」では届かない!?


「誰かに見られている気がする」


「近所の人が悪口を言っている」


「テレビで自分のことが流れていた」


こうした被害妄想に悩む方と向き合うとき、私たちは毎回、


言葉の選び方や関わり方に細心の注意を払っています。


なぜなら、「そんなことないよ」と否定してしまうことで、


本人の不安や孤独がかえって強まることがあるからです。




被害妄想は怖いから生まれる?


被害妄想は、本人にとって「事実」ではなくても、「現実のように感じている怖さ」

があります。


本人も、「こんなことを思ってしまう自分はおかしいのではないか」と、


心の中で混乱していることも少なくありません。


こころのあいの訪問看護では、まずその【怖さ疑い】に共感するところから関わりを始めています。




訪問看護での関わりの工夫


被害妄想に対して、私たちが大切にしている関わり方のポイントをご紹介します。



1. 否定しない、焦らせない


「そんなことないですよ」と簡単に言わず、


「そう感じたんですね」「それは怖かったですね」と気持ちの受け止めから始めます。



2. “安心できる場”をつくる


いつも同じ時間に訪問したり、表情や声のトーンを落ち着かせたり、


→ 
「この人は敵じゃない」「ここは安全だ」と感じてもらう環境を整えます。



3. 事実と感情をゆっくり分けていく


「実際に何があったのか」「そのときどう感じたのか」を、時間をかけて整理します。


急いで正しさに導かず、自分の気持ちに気づく力を一緒に育てていく


関わりを大切にしています。



周囲の方が気をつけたいこと


ご家族や支援者の方が関わる際にも、次のようなポイントを意識すると、


関係がこじれにくくなります。



● 「証明しようとしない」


→「そんなのありえない」「証拠はあるの?」という言い方は、


逆に対立や不信感を生みやすくなります。



● 感情的に反応しない


→被害的な内容を言われたときも、「そんなこと言わないで!」と強く反応せず、


「最近つらいことがあったのかな?」と気持ちに寄り添うようにします。


● 日常の安心感をつくる


→決まった時間にご飯を食べる、天気の話をするなど、「日常の変わらない安心」が


心を落ち着ける土台になります。


 

まとめ


被害妄想は、本人だけの問題ではありません。


日々の生活や関係性、ストレス、疲れさまざまな要因が重なって生まれてくるものです。


こころのあいでは、ただ正すのではなく、理解しようとする姿勢を持つことを何より大切にしています。


「本当はわかってほしい」「でも言えない」


そんな声なき声を、これからもそっと受け止めていきたいと思っています。



訪問看護ステーション こころのあい
所長・稲垣文雄


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