
ここあい便り⑪ 〜被害妄想への関わり方と、訪問看護でできること〜
「そんなことないよ」では届かない!?
「誰かに見られている気がする」
「近所の人が悪口を言っている」
「テレビで自分のことが流れていた」
こうした“被害妄想”に悩む方と向き合うとき、私たちは毎回、
言葉の選び方や関わり方に細心の注意を払っています。
なぜなら、「そんなことないよ」と否定してしまうことで、
本人の不安や孤独がかえって強まることがあるからです。
被害妄想は“怖い”から生まれる?
被害妄想は、本人にとって「事実」ではなくても、「現実のように感じている怖さ」
があります。
本人も、「こんなことを思ってしまう自分はおかしいのではないか…」と、
心の中で混乱していることも少なくありません。
こころのあいの訪問看護では、まずその【怖さ”や“疑い】に共感するところから関わりを始めています。
訪問看護での関わりの工夫
被害妄想に対して、私たちが大切にしている関わり方のポイントをご紹介します。
1. 否定しない、焦らせない
「そんなことないですよ」と簡単に言わず、
→「そう感じたんですね」「それは怖かったですね」と気持ちの受け止めから始めます。
2. “安心できる場”をつくる
いつも同じ時間に訪問したり、表情や声のトーンを落ち着かせたり、
→ 「この人は敵じゃない」「ここは安全だ」と感じてもらう環境を整えます。
3. 事実と感情をゆっくり分けていく
「実際に何があったのか」「そのときどう感じたのか」を、時間をかけて整理します。
→ 急いで“正しさ”に導かず、“自分の気持ちに気づく力”を一緒に育てていく
関わりを大切にしています。
周囲の方が気をつけたいこと
ご家族や支援者の方が関わる際にも、次のようなポイントを意識すると、
関係がこじれにくくなります。
● 「証明しようとしない」
→「そんなのありえない」「証拠はあるの?」という言い方は、
逆に対立や不信感を生みやすくなります。
● 感情的に反応しない
→被害的な内容を言われたときも、「そんなこと言わないで!」と強く反応せず、
「最近つらいことがあったのかな?」と気持ちに寄り添うようにします。
● 日常の安心感をつくる
→決まった時間にご飯を食べる、天気の話をするなど、「日常の変わらない安心」が
心を落ち着ける土台になります。
まとめ
被害妄想は、“本人だけの問題”ではありません。
日々の生活や関係性、ストレス、疲れ…さまざまな要因が重なって生まれてくるものです。
こころのあいでは、ただ正すのではなく、理解しようとする姿勢を持つことを何より大切にしています。
「本当はわかってほしい」「でも言えない」
そんな声なき声を、これからもそっと受け止めていきたいと思っています。
訪問看護ステーション こころのあい
所長・稲垣文雄



